たいかんおんど

たいかんおんど
かたりて しーちゃん

物語は
たいかんおんどよ

データ温度と
体感温度は違うのよ

さっき
こくまや くまくまが言っていたでしょ?

夏至が一番長いのに
気温が暑いのは 7月8月

だけど
植物にとって本当に暑いのは 5月って

あれはね
物語の体感温度なのよ

物語の体感温度は
どれだけ鮮烈に印象が残るかってこと

植物の感覚だと
5月の暖かさが 一番記憶に残るのよ

だって
とても寒い寒い冬を過ごした後でしょ?

そして
あっ あったかくなってきたー
って感じるのが 4月おわりから 5月頃でしょ?

その記憶の残像を見ると
4月5月が一番暖かかったって体感になるの

そのエネルギー的な体感が
物語を生むの

この間
しーちゃんは ちくさあの浜辺に 皆既月食を見に行ったわ

そしたらね
雲がたくさん立ち込めていて 空は真っ暗だったの

砂浜のブルーのシートの上で
真っ暗な海を見ながら ゆっくりと海の音を聞いていたわ

そしたら月の音がひびいてきたの

それでね
その音を聞いて しーちゃんは 体感したの

まるで凍てつく
真冬の海にいるみたい

氷の海
南極や北極の情景が 想い浮かんできたのよ

ほら
お月さまをみんなが見てる時 その土地だけ真っ暗で 大きな雲に覆われてると さみしい気がするでしょ?

その土地のさみしい想いがね
イメージとして真冬のような冷たさになるの

さみしさと 寒さはね
イメージとして 似ているのよ

だから物語の体感温度は
あの月食の海の時 真冬のはじまりを体感させたの

それでね
しーちゃんは ねこたち みんなで海を見ていたわ

金の指輪とネックレスを首につけたるーちゃんがいて
それを見ている こはるもいたわ

こはるはね
さみしそうな顔でるーちゃんを見つめていたの

そのこはるの姿がね
真冬で凍り付いた海の中で キラキラしている光に見えたの

しーちゃんはね
そのキラキラの光を とても美しいとおもったわ

それで一緒においのりしたのよ
「
るーちゃん 早く戻ってきてね 」

そしてね
今日は暗くて見えなかったわ

最後まで寒くてさみしかったわ
そう想って 帰ろうとした時にね

浜辺で 月が見えたのよ
一瞬 雲が晴れ その隙間からお月さまが見えたのよ

そしたら
みんなお月さまにくぎ付けになったのよ
「 みえたーーー 」って想ったわ

でもちょっと見えたら
また雲が来ちゃったわ

その夜の月の光景を
しーちゃんは 想いかえしたの

その月のタイミングは
体感温度的に 一瞬の暖かさを感じさせたの

真冬の海のような長い冷たさと
月が出た時の 一瞬の暖かさ

その冷たさと 暖かさのコントラストがね
月の光の暖かさを とても鮮烈に感じさせたのよ

そして想ったのよ
もしも最初から最後まで月がくっきりと見えていたら
物語がまったく違っていたって

真冬のような冷たさから 一瞬の暖かさ 明るさが見え始めた
その体感温度に しーちゃんは物語性をより感じたの

そしてしーちゃんは気づいたわ
日食と月食のタイミングの真の意味を

水の時代はね
データの温度ではなく 想念の体感温度なの

その体感温度がタイミングを決めるの
心に鮮烈に焼き付いた温度の体感が タイミングの瞬間なの

しーちゃんは
あの日 あの場所 あの時に 月食の物語を感じたわ

そしてその物語の体感温度がね
植物の声を より聞かせてくれたの
だって植物は 想念の体感温度で生きてるから